できる限り治療を回避するための予防的アプローチ

むし歯や歯周病は、進行してから治療を受けることで一定の回復は可能ですが、一度失われた歯質を完全に元通りに戻すことはできません。たとえ詰め物や被せ物で補修ができたとしても、治療を受けた歯は時間とともに寿命が短くなってしまいます。
そのため、歯を長く健康に保つには、日頃から予防に努め、そもそも治療が必要になる事態を避けることが非常に重要です。ご自身の歯でしっかりと噛むことは、身体全体の健康や認知機能の維持にも好影響をもたらします。また、治療には時間的・経済的な負担がつきものですが、予防を意識した通院であれば、それらの負担も大幅に軽減されます。予防は患者様にとって大きな利益となります。
予防歯科とは

お口の中には多くの細菌が存在しており、毎日のケアをしっかり行っていても、むし歯や歯周病のリスクが常に潜んでいます。自覚症状がないからといって安心せず、予防を目的とした定期的な通院が重要です。当院では、症状が現れる前からお口の状態をチェックし、トラブルを未然に防ぐことを重視しています。
患者様がいつまでもご自身の歯でお食事を楽しめるよう、日々のケアや生活習慣の見直しを含めた総合的なサポートを行ってまいります。
歯のクリーニングが必要な理由

歯のクリーニングでは、歯の表面に付着した歯垢や歯石、着色汚れを専用の機器を使って取り除きます。歯垢は細菌のかたまりで、プラークとも呼ばれるものです。日々の歯みがきで除去することは可能ですが、すべての汚れを完璧に落とすのは難しく、どうしても磨き残しが出てしまいます。
この磨き残した歯垢が、2~3日経過すると硬化し「歯石」へと変化します。歯石は通常の歯みがきでは取り除くことができず、歯の表面がザラついた状態になるため、さらに汚れが付きやすくなってしまいます。歯垢が発するガスは口臭の原因となり、歯ぐきの内側に入り込むことで歯周病のリスクも高めます。
歯のクリーニングは、こうした歯垢や歯石、着色汚れを取り除くことで、お口の健康を守るだけでなく、見た目の清潔感や印象の向上にもつながります。定期的なクリーニングは、健康維持と美しさの両面から非常に重要なケアといえます。
予防歯科メニュー
スケーリング
毎日の歯みがきでは落としきれない、歯ぐきの中や歯周ポケットにたまった汚れを取り除く処置です。
特に歯垢や歯石は、歯ブラシだけでは完全に除去できないことが多く、専用の機器を使って取り除く必要があります。当院では、超音波の振動を利用したスケーラーを用い、歯ぐきへの負担を抑えながら丁寧にクリーニングを行っております。
PMTC
歯科衛生士による専門的なクリーニングです。
専用の器具とフッ素配合のペーストを使って、歯の表面に付着した汚れや着色をきれいに磨き上げます。歯と歯ぐきの境目までしっかりとケアできるため、むし歯や歯周病の予防に効果的です。普段のセルフケアでは届かない部分まで清掃できるのが特長です。
フッ素塗布
歯の表面にフッ素を塗ることで、むし歯になりにくい状態を維持することが可能です。
フッ素には歯質を強くする働きがあり、歯の再石灰化(初期むし歯の修復)を促す効果もあります。生えたばかりの歯は特に効果が高いため、お子様はもちろん、大人の方にもおすすめの予防処置です。
予防歯科のメリット
早期発見・早期治療でむし歯や歯周病の進行を防ぎます
むし歯や歯周病は、初期の段階では自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。特に歯周病は痛みがないまま重症化し、気づいたときには歯がグラグラと動き、抜歯に至ることもあります。定期的に予防歯科を受診していただくことで、こうした病気の兆候を早期に発見し、適切なタイミングで治療を開始することができます。
ご自身の歯をできるだけ長く保つことができます
歯は一度削ったり抜いたりすると、元通りに戻すことはできません。むし歯治療を重ねるたびに歯の寿命は短くなり、最終的には抜歯に至ることもあります。予防歯科では、むし歯や歯周病の発症や進行を防ぐことで、患者様ご自身の歯を長く使い続けていただけるようサポートいたします。
治療にかかる費用や時間の負担を軽減できます
予防のための通院には一定の費用がかかりますが、重症化してから治療を行うよりも、通院回数や治療にかかる費用を大幅に抑えることができます。また、お口の健康を保つことで全身の健康維持にもつながり、将来的な医療費の軽減が期待できます。負担を最小限に抑えながら、健康な状態を維持することが予防歯科の大きな魅力です。
歯石・歯垢について
歯石
歯石は、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)が、唾液中に含まれるカルシウムやリンと結びつくことで、石のように硬くなったものです。とくに唾液腺の近くにできやすく、下の前歯の裏側や上の奥歯の外側などは注意が必要です。一度歯石になってしまうと、日々の歯磨きでは除去ができません。歯科医院で専用の器具を使って取り除く必要があります。
大切なのは、歯石になる前の段階である歯垢やバイオフィルムのうちに、しっかりとケアすることです。毎日のセルフケアでは、歯石がつきやすい場所を意識して磨くことが予防につながります。
歯垢
歯垢は、歯の表面や歯ぐきとの境目に付着するネバネバとした物質で、細菌が大量に集まってできています。目に見えないほど小さな細菌ですが、歯垢1gの中には約1,000億個もの細菌が存在していると言われています。
唾液には口の中を洗い流す作用がありますが、歯垢は粘着性が強いため唾液では取り除くことができません。そのため、毎日の歯磨きによってしっかりと除去することが重要です。ただし、うがいだけでは落としきれないため、正しいブラッシングの習慣が欠かせません。
歯石・歯垢を放置するリスク
歯石や歯垢は単なる汚れではなく、放置することで歯ぐきの腫れや出血、口臭、さらには歯周病へとつながるリスクがあります。歯垢が残ったままの状態が続くと、唾液の成分と結びついて石灰化し、硬い歯石となります。そうなると、歯ブラシでは除去できず、専門的なクリーニングが必要となります。
患者様ご自身の歯を健康に保ち、長く使い続けていただくためにも、定期的なメンテナンスを受けることがとても大切です。「まだ大丈夫」と思わず、気になることがあればいつでも当院へご相談ください。